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麻薬常習犯でも手を出さない!危険ドラッグがラブホで蔓延…製造工場に潜入し、その正体を追った

麻薬常習犯でも手を出さない!危険ドラッグがラブホで蔓延…製造工場に潜入し、その正体を追った

危険ドラッグ(脱法ハーブ)の事件が後を絶たない。

今年1月から9月までに、危険ドラッグの使用が原因とみられる死亡者数は74人(警察庁)。なかでも「ハートショット」と呼ばれるハーブは、1ヵ月の間に15人もの命を奪っている。こうした危険な薬物がどのように製造され、そして、どのような形で一般の人に使用されているのか。その事実に迫ったのが、『脱法ドラッグの罠(わな)』だ。著者である森鷹久(もり・たかひさ)氏に聞いた。

―本書を書こうと思ったきっかけから教えてください。

森:『身近な知人が亡くなったんです。2011年の秋頃でした。知人は彼女と同棲(どうせい)をしていて、ハーブを吸いながらよく性行為をしていました。それがある日、ハーブを吸ったら突然奇声を上げて錯乱状態になり、彼女を殴ったり噛(か)みついたりした後に、はだしでマンションの屋上に駆け上がって、飛び降りて死んだんです。わずか10分足らずの出来事でした。
その後、警察が来て検視をしたんですが、禁止されている薬物ではなかったので自殺ということになりました。この事件がきっかけで、週末など時間のあるときに取材をするようになったんです。』

―ご自身も危険ドラッグの吸引経験があるとか?

森:『はい。取材の過程で吸ったことがあります。お酒を飲むと頭がほわーんとして、いい気持ちになると思うんですが、同じようにハーブを吸うと頭がほわーんとして気持ちよくなります。ただ、その後にすさまじい不快感が襲ってきたので、怖くなってタクシーに乗って宿泊先のホテルに帰ろうとしました。
すると「誰かが自分を追いかけてくるんじゃないか」「誰かがどこかから自分を監視しているんじゃないか」「誰かが僕を襲おうとしているんじゃないか」という被害妄想的なことを感じたんです。本当に暴れてしまいたいくらいでした。
そして、その後の記憶がなくなって、ハッとして起きたらホテルのベッドでした。とても恐ろしい体験でした。』

―それだけ恐ろしい薬物なのに、危険ドラッグは若者だけではなく、中高年にも広まっているとか…。

森:『はい。覚せい剤もそうだと思うんですが、ハーブを吸うと性的な感度が増すので、中高年の方はバイアグラ代わりに使っている人が多いんです。ハーブを吸って性風俗のお店に行ったり、ホテルに女のコを呼んだり、性的な興奮を高めるために使用している人がほとんどだと思います。
新宿・歌舞伎町のラブホテル街のハーブ屋さんに行くと、「ハーブ、ラブホテルに配達します」という看板が以前は結構ありました。また、あるラブホテルの自動販売機には、コンドームやエログッズと一緒にたばこ状の危険ドラッグをひとつ800円程度で売っていたこともあります。
でも、こうしたハーブのデリバリーや自動販売機は、今は少なくなっているはずです。』

『これは、あるラブホテルの経営者に聞いた話なんですが、「ここ数年、ハーブを吸ってデリヘルなどの女のコを呼ぶお客さんが増えている。そして、部屋にやって来た女のコにハーブを強引に吸わせようとしたり暴力を振るう人までいる」とのことでした。
また別のラブホテルの受付の人は、「ハーブを吸ったお客さんが部屋から出てきて、裸で走り回ったり、おしっこをしたりして警察を呼んだことがあった」と話していました。こうした事件のあった街では当然、ハーブのデリバリーを禁止するホテルが増えたのだと思います。ホテル側も事件を起こされてはたまりませんから。』

―なぜ、異常な行動をとる人が増えたんですか?

森:『ハーブは規制されるたびに、その成分を変えて「イタチごっこ」のなかで販売されています。そのため、現在の第16世代とも17世代とも呼ばれるハーブは、どんな成分が入っていて、吸った後にどんな影響が出るかわからないんです。
それに作り方がとても杜撰(ずさん)で、同じ袋をみんなで分けて吸っていても、それぞれ飛び方が違う。ひとりは気持ちよくなっているのに、別のひとりは泡を吹いて気絶していたりするんです。それくらい成分に偏(かたよ)りがある。場合によっては死ぬこともある。
だから、大麻や覚せい剤を常習的にやっている人ほどハーブには手を出しません。言葉は悪いですけど“プロが認める怖さ”“プロすらも手を出さないドラッグ”なんです。』

―森さんはハーブの製造工場に潜入取材したそうですが?

森:『僕が行ったのは都内にあるごく普通の住宅でした。玄関を入ってすぐダイニングキッチンがあって、横に応接間があって、奥に部屋がひとつあるような。そのダイニングキッチンが工場と呼ばれるところでした。粉塵(ふんじん)を吸い込むと命に関わるということで、防塵(ぼうじん)マスクとゴーグル、ビニールのカッパと手袋をつけました。
そして、戸棚から乾燥させた何かの葉っぱと、透明な袋に入った化学薬品を出してきて、それぞれステンレス製のボウルに入れる。次に化学薬品に何かの液体を入れて溶液を作るんですが、液体の量は目分量でした。
液体ができたら、それを鉄製のスプーンを使って葉っぱと交ぜ合わせます。よく交ざったらテーブルの上に敷かれたアルミホイルにのせて乾燥させる。乾燥したら3gずつパッケージして、シールを貼れば出来上がりです。本当に家で料理を作っているような感じでした。』

―その化学薬品はなんなんですか?

森:『化学薬品を卸しているところにも行ってみたのですが、そこで取材拒否に遭ってしまったので、正確な成分はわかりません。「駐車場に積んであるのはなんの粉なのか?」と聞いたら「殺虫剤だ」と言っていましたが、僕はおそらく人工THC(合成カンナビノイド)じゃないかとみています。そして、その粉が入っていた袋には「○○有限公司」と書いてあったので、中国から輸入されてきたものだと思います。』

―今後、危険ドラッグはどうなっていくと思いますか?

森:『みんな気持ちよくなりたいと思って吸っているはずなのに、それがいつの間にか“死の薬”になってしまったことにとても驚いています。でも、一度できた需要はなくならない。いくら規制しても地下に潜るだけだし、イタチごっこは終わらないと思います。
だから、使う側の意識を変えてもらうしかない。そこで、まずは危険ドラッグ(脱法ハーブ)が本当はどのような薬なのかを知ってもらいたいんです。僕は、そのために、この本を書いたのですから。』

●森 鷹久(もり・たかひさ)

1984年生まれ、佐賀県出身。高校中退後、テレビ番組制作会社に勤務。その後、ファッション誌やヤングカルチャー誌の編集を経て、フリーランスの編集者・ライターとして独立。若者文化に詳しく、ドラッグ問題やネトウヨ問題などを中心に取材している。共著に『ヘイトスピーチとネット右翼 先鋭化する在特会』(オークラ出版)がある

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