
ボクシング元日本ミドル級王者で俳優の大和武士容疑者(47)=本名・江口義光=が13日までに、覚醒剤取締法違反(使用)容疑で警視庁に逮捕された。東 京都渋谷区の路上で警察官から職務質問を受け、尿検査で覚醒剤の陽性反応が出た。調べに対し「身に覚えがない」と容疑を否認している。
かつてボクサーとして日本チャンピオンまで上り詰め、俳優に転身後も新人賞を受けるなどして活躍していた男が
覚醒剤で逮捕された。
警視庁渋谷署によると、大和容疑者は今月10日午後5時20分頃、渋谷区道玄坂の路上で警戒中の警官から職務質問を受けた。警視庁本部地域指導課の「スペ シャリストたち」(捜査関係者)は、暴力団員を思わせる風体の大和容疑者をパトカー内から注視。不審と判断し、声を掛けた。
職質に応じた大和容疑者は「疲れてるんで、後にしてくれない?」「(覚醒剤は)昔はやったことあるけど、今はやっていない」などと返答。尿検査を依頼されると「令状を持ってこないと、そんなものやらないよ」などと拒否した。
捜査員は渋谷署まで同行させて説得に当たったが、容疑者は「休憩したい」と、のらりくらり。さらには「息が苦しい」と主張し、自ら救急車を呼んで都内の 病院への搬送を要求した。しかし、到着した病院での診察結果は「異常なし」。同署は強制採尿の令状を取り、検査を行った。陽性反応が出たため、職質から約 8時間が経過した翌11日午前1時30分、緊急逮捕に踏み切った。
調べに対し、大和容疑者は名前と出身中学を述べたきりで、住所や職業、以前にボクサーだったことなどは何一つ話していないという。4月下旬から5月10日までに覚醒剤を使用したとする逮捕容疑については「身に覚えがない」と否認している。
大和容疑者は、岡山の少年院を出所後、ボクサー・カシアス内藤にあこがれ上京し、86年にプロデビュー。88年には日本ミドル級王者となった。甘いルックスも人気を呼び、現役中の89年、映画「どついたるねん」で俳優デビューも果たした。
近年はVシネマを中心に活動していたが、関係者によると昨秋頃から歌手活動も行い、ワンマンライブも開催。俳優業の殺陣に役立てようと、空手の練習もしていた。容疑者を知る関係者は「マジメにやっていきますと話していたのに…」と残念そうに語った。
大和容疑者は2008年にも、すし店店主に包丁を突きつけて殴るなどした殺人未遂などの現行犯で逮捕。傷害などの罪で懲役1年6月、執行猶予4年の有罪判決を受けている。
◆大和 武士(やまと・たけし)1965年8月7日、岡山県生まれ。47歳。86年にワタナベジムからプロボクサーとしてデビュー。87年、日本ミドル 級新人王。88年、日本同級王座獲得。同年、防衛1回で王座から陥落。92年引退。通算19戦10勝(5KO)7敗2分け。俳優転身後は90年の「鉄拳」 で日本アカデミー賞優秀新人賞。94年の「トカレフ」でヨコハマ映画祭助演男優賞を受賞した。