薬物逮捕者が陥った「キメセク」本当に気持ちいい?
押尾学、酒井法子(2009年)、ASKA(2014年)、高知東生(2016年)……。近年、薬物の使用・所持で逮捕された芸能人たちだが、これらのケースには共通点がある。それは、カップルで使用していることだ。
押尾学は、六本木ヒルズの一室でクラブホステスとMDMAを使用して相手は死亡。ASKAは、10年来の愛人と一緒に覚せい剤を使用したところを逮捕された。酒井法子は夫(当時)が覚せい剤の所持で捕まったあとに行方をくらましたものの、自らも逮捕されている。
高知東生の場合、横浜市内のラブホテルで一緒にいたクラブホステスと共に現行犯逮捕された。このようにカップルで逮捕される薬物事件が多いのはなぜか?
その因果関係を分析した本が、闇社会のルポで知られるノンフィクション作家・溝口敦氏の書いた、その名もズバリ『薬物とセックス』(新潮新書)だ。
覚せい剤常習者の間では、覚せい剤を使用しながらのセックスを「キメセク」と呼ぶ。溝口氏が薬物とセックスの関係に着目したのも、「現代において覚せい剤の使用はセックスと切り離せない関係にある、と最初から認識しておいたほうが、薬物をより正確に見ることができるのではないか」と考えたからだという。
「覚せい剤」は「催淫剤」ではない
それでは、覚せい剤を使用してのセックスとはどのようなものなのか? 多くの常習者が使用しながらのセックスを好むところからすると、非常に興奮し、勃起も促進されるのかと考えそうだが、そう単純なものでもないらしい。
溝口氏が取材した、ある厚生労働省の麻取関係者は、次のように話している。
「覚せい剤には強い精神興奮作用があり、集中力を高め、眠気や疲労感を除去するなどの効果の他、性的快感を増強する作用があると言われている(しかし性欲を亢進させる、いわゆる催淫剤でない)」
「問題は覚せい剤を使う目的をどこに向けるかです。ドライバーなら運転への集中力、持続力に期待して使うだろうし、享楽を目的とする物なら、快楽への長続きと、それへの熱中を増すために使うかもしれない」
覚せい剤では射精はむしろ困難に?
溝口氏が取材の結果、推察したところによれば、覚せい剤の乱用者たちは、覚せい剤使用による強烈な快感にセックスの快感を足し算しようとしているのであり、射精そのものに関しては、覚せい剤を使用することでむしろ困難になるのだという。
そのため、覚せい剤と一緒にバイアグラを服用する者もおり、そうでもしなければ「中折れ」する可能性も大きい。
ただ、女性の場合は薬物によって快感の度合いも高まる。溝口氏は、薬物を使用したセックスを男が好むのは、女が示す強い快感が<男の成功の証>となること、そして射精には至らずとも勃起を維持して続く刺激が快いのではないかと分析している。
平成28年度版の『犯罪白書』によれば、覚せい剤取締法違反の検挙人員は、平成9年には1万9937人と平成に入って最多を記録。2001年以降は減少傾向にあったものの、2006年以降はおおむね横ばいで推移し、毎年1万人を超える状況が続いている。
インターネットの普及で昔に比べて薬物の入手が容易になり、我々がイメージするよりも薬物の危険性はずっと身近だ。芸能人が富や名声を捨ててまで覚せい剤に溺れる理由の一つに、セックスとの深い関係がある。
via – Health Press